仏壇の右側に配置されている「リン」は、真鍮でつくられたお椀型の仏具です。リン棒という専用の小さな棒でリンの縁を叩き、音を出します。
子どもがお参りをする際におもちゃにされがちなリンですが、実は鳴らし方にはしっかりとしたお作法があることをご存知でしょうか。最近では自宅に仏壇がない家も増えているため、いざというときに使い方やお作法がわからず戸惑う方もいらっしゃると思います。
本記事では、リンの意味や由来、鳴らし方のお作法などをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
目次
「リン」について
美しく響く「リン」の音は、心が洗われる心地よさがありますよね。この澄み切った音は、極楽浄土の仏様の耳にまで届くとも言われています。ここでは、そんな「リン」の由来や役割について解説します。
リンの由来
読経やお参りの際に鳴らす仏具「リン」は、漢字では「鈴」もしくは「輪」と書きますが、宗派によっては「鏧(きん)」や「鐘(かね)」とも呼ばれています。
「リン」は、もともとは坐禅や瞑想の勤行の際の開始や終了の合図として利用されていたもので、日本では禅宗(臨済宗・曹洞宗・黄檗宗)で使われていました。その後、徐々に他の宗派でも読経や修行の際に使われるようになり、現在ではすべての宗派で使われるようになりました。
名前の由来は、二つの説が有力とされています。一つ目は、お釈迦さまがお亡くなりになられた際に悲しんで鳴いた鳥がリンという名前で、そのリンの鳴き声に似た音を再現したものが「リン」だったという説。二つ目は、音色が風鈴に似ていたため「リン」となった説です。
リンの役割
「リン」の役割は主に以下の3つです。
1.澄んだ音で人々の邪念を祓う(はらう)
人が持つ、よこしまな考えや雑念のこと邪念です。「リン」はこれを祓ってくれる役割があります。
2.音に乗せて供養や祈りを極楽浄土へ届ける
供養や祈り、俗世に生きている人の気持ちを「リン」の音に乗せて、極楽浄土へ届ける役割があります。
3.読経の区切りとして鳴らす
「リン」の音は、ドレミファソラシドの音階でいうと「レ」の音にあたります。この音には、読経の音程とリズム、スピードを合わせやすくする役割があります。
「リン」の使い方について
次に、「リン」の置き方や鳴らし方などをご紹介します。きれいな音色を響かせるために重要なポイントについてもお伝えするので、ぜひご参考にしてください。
「リン」の配置は右側手前に
仏壇の右側手前にリン台と呼ばれる台を配置し、その上にリン布団を敷いて「リン」を置くことが正式ですが、もし木魚がある場合は仏壇の左側に「リン」、右側に木魚を置くのが一般的なかたちです。
「リン」を鳴らすときはリン棒の持ち方がポイント
「リン」の音色をしっかりと響かせるには、リン棒の持ち方が重要です。リン棒は、上の方(木の部分)を親指と人差し指で軽くつまむように持ち、「リン」のふちの部分を優しく叩きます。
「リン」はどこを叩いても音が鳴りますが、ふちの外側を叩くことが一般的です。ただし、これは宗派によって違いがあり、内側を叩く場合もあります。なお、ふちの外側を叩くと澄んだ音が響き、逆に内側を叩くと柔らかい音が響きます。
どちらの場合も打ち付けるように強く叩くのではなく、「リン」のふちに沿って軽く弾ませるイメージで叩くときれいな音が出ます。
「リン」を鳴らす回数は2回が一般的
「リン」を鳴らす回数は、通常は2回が一般的です。1回目は軽く鳴らし、仏さまに慈悲を願います。2回目は、1回目よりも少し強めに鳴らし、自分自身の信仰と仏さまへの帰依の誓いを表します。つまり、「仏さまの心と自分の心を1つにする」という意味で、「リン」は2回鳴らすのです。
ただし、「リン」を鳴らす回数は宗派によって異なります。宗派別にご紹介します。
・真言宗:鳴らす回数は2回。1回目は優しく、2回目は少し強めに叩きます
・曹洞宗:3回鳴らすお寺と、内側を2回鳴らすお寺があります。
・浄土宗:お経の本に定められた回数8回を読経のときのみ鳴らします。読経をしないお参りの際には鳴らしません。
・天台宗:読経の始めに2回、読経が終わるごとに1回、読経がすべて終わったら3回鳴らします。
・日蓮宗:朝に1回、夕方に2回鳴らします。
・浄土真宗本願寺派(西):読経の始めに2回、中間に1回、最後に3回鳴らします。
・浄土真宗真宗大谷派(東):読経の始めと中間に2回ずつ、最後に3回鳴らします。
なお、一般家庭で鳴らす場合は特に回数は決められていないので、手を合わせる前に1~3回を目安に鳴らすとよいでしょう。
「リン」は縦方向に強くたたかない
気をつけないといけないことは、真上から縦方向に強くリンを叩かないことです。縦方向に叩くと音が響きづらくなり「リン」のきれいな音色が出せません。場合によっては、「リン」が割れてしまう原因にもなるので注意が必要です。
なお、鳴らした音を止めたい場合は、リン棒で「リン」の上を押さえてあげると音が消えるのでぜひお試しください。
仏壇の拝み方について
前述した通り「リン」は、読経のなかの決められたタイミングで鳴らすことが本来の使い方であるため、お参りのみで読経をしない場合は「リン」を鳴らす必要がないとされています。
ただし、近年では読経の有無に関わらず、お参り前の合図として使用することが一般的となっています。ここでは現在一般的となっているお参りの方法についてご紹介します。
お参りの方法
宗派による細かなマナーの違いはあるものの、基本的な作法はほとんど変わりません。お参りの流れは以下のとおりです。
1.(弔問の場合)遺族にお供えものを渡す
2.ろうそくに火をつける
3.線香を立てる
4.「リン」を鳴らして手を合わせる
5.ろうそくの火を消す
「リン」を鳴らした後に手を合わせる際には、故人の冥福を祈ります。もしも読経ができるのであれば、「リン」を鳴らした後に読経し、礼拝した後に再度「リン」を鳴らしましょう。
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